意欲的な、というかマニアックな本ばかり出版しているウェッジ出版から、
『東海道品川宿』という文庫本が出ている。
1961年に没した国文学者で早大教授の岩本素白の随筆集で、近代随筆の
最高峰とも評さる。表題の傑作「東海道品川宿」を中心に当時の裏町の
日常の風景がつづられている。
革製のカバーをかけたこの文庫をここしばらく枕元に置いている。格調高い
素白の文章にゆっくり目を走らせながら読み進めていると、自然と彼が過ご
した少年時代のどことなく猥雑な宿場町、モノクロな情景の夢の世界に落ちて
いけそうな気がする。
そんな素白随筆にあやかりたく、今回は「中山道高崎宿」というタイトルで書き
始めた。これから続く拙文はどうであれ、何となくいい響きだ、「中山道高崎宿」。
江戸期から街道の宿場町であり、また城下町として賑いを誇った高崎、現在
では多くのオフィスビルが立ち並ぶ北関東最大のこの街には、旧街道を一本
横道に逸れてみると当時の面影を偲ばせる場所がまだ多く残る。
田町の大通りの北端、本町十字路を右に入ると子どもたちのにぎやか声が
聞こえてくる。氷卸販売の「日本一」さんだ。
この季節、同店の店先には種類豊富で手ごろに味わえるかき氷を求めて、
近所の子どもたちや周辺の学校に通う高校生が行列をなす。最近は近所から
だけでもないようだ。
昔ながらのかき氷を楽しめると口コミやネットで広まり、遠方からも1杯数百円
のかき氷を目当てにファンが訪れるとのこと。その微笑ましい真夏の光景は、
今月はじめ民放の首都圏ニュース番組でも紹介されている。
平成の中山道高崎宿にはもう1軒「日本一」がある。かき氷の日本一さんが
ある本町通りをそのまま西へ、高崎神社がある赤坂町十字路をさらに過ぎ、
その先の坂道を下りきると見えてくるのが「岡醤油醸造」さんだ。
岡醤油さんは明治30年に高崎市常磐町の旧中山道沿に開店、当時のままの
建物を活かした店舗は往年の雰囲気を存分に偲ばせてくれる。
レンガ造りの煙突や母屋など、そのあまりにも時代を伝える佇まいは、遠方から
街道歩きに訪れた方たちを驚かせ、喜ばせてくれもする。
現在では工場を県内のみどり市に移し、醸造は行っていないが、国産原料を
使い、じっくり熟成させた醤油は「日本一しょうゆ」の銘柄で販売され、こだわり
あるユーザーの間ではよく知られた逸品。
伝統を守りつつ新たな商品作りにも余念がない。醤油ラベルをモチーフにした
ポーチやオーダーメイドの小ロットの醤油の受注をはじめ、最近ではこの醤油を
使ったアイスクリームが人気だとのこと。
と今回のこの文章、他聞調の文末ばかりなのは夏バテ気味な担当者がほとんど
外に出ていないのが理由。ブログのアップもほぼ十日ぶり。
そんななか、2つの氷菓を求めて宿場歩きに足こそ運べなかったが、半ば想像に
任せて筆を走らせたのは高崎の街道研究家、迷道院さんから本日いただいた
温かなお言葉のメールのお陰であります。
◎迷道院さんのブログ「隠居の思ひつ記」から「日本一しょうゆ」の記事
http://inkyo.gunmablog.net/e94224.html

