高崎駅東口の高崎市タワー美術館で、明後日5日から同館の開館10周年特別展
『平山郁夫展 ~大唐西域画への道~ 』が開催される。
平和への祈りを込めた作品を数多く残した日本画家・平山郁夫(1930-2009)氏。
仏教伝来の道程からシルクロードをテーマに描いた作品は特に広く知られている。
この展覧会では、国内最大規模の平山コレクションを誇る佐川美術館所蔵の
「大唐西域画」を始めとする約70点の本画、素描を展観するとともに、平山氏の
生涯と平和を追求した活動を紹介する。
これは平山氏らをモデルにしたのではないか、と思しき小説がある。
短編小説の名手とも呼ばれた三浦哲郎(1931-2010)の没後に未刊行作品3篇を含め
彼の短編全62篇をまとめて刊行された『完本 短篇集モザイク』(新潮社)に収まる
『いれば』。400字詰め原稿用紙で10枚ほどの小品。
この作品に限らず、あまりにも見事な練り選ばれた日本語で書かれた名手の作品を要約
するのは相当ためらわれるが、敦煌の莫高窟鑑賞のツアー一行が主な登場人物である。
幸運にも滞在期限とあわせて修復が終わった未見の石窟群を訪れることができ、
「日本の文化界を代表する長老」一行8名は宿願を達した満足感と歓び喜びに心が常に
なく浮き足立つ。
そして、付き添った世話人らが思ってもみなかったオプションツアーを決行する。
道なき砂漠にジープを半日走らせ向かったのはゴビ砂漠とタクラマカン砂漠の境あたり
に残る玉門関という関所跡。
さすがにこの道中は平坦なアスファルト道に馴れた老人たちの身には応えた。その上、
急遽旅程を変更したため、翌日は早朝から飛行機の替わりに25時間の列車での移動。
ようやく到着したひなびたホテルのいつまでも準備中の看板が掲げられた薄くらいバー
の円卓で、話はクライマックスを迎える。
一行の中の詩人が上着のポケットから白いハンカチを取り出し、卓上に広げる。そして
両手で上あごの入れ歯を外してその上に置いた。仲間が訝しがるなか、中国文学者が理由
を尋ねると、砂漠の砂のせいかしっくりこないからと言い舌で歯茎をぬぐう。
すると洋画家が下あごの入れ歯を抜き取って詩人のものの隣に置き、小説の大家の見事な
純金の総入れ歯、温厚で遠慮深い日本画家の4個の部分入れ歯へと自主出品は連鎖する。
薄笑いを浮かべる団長の仏文学者は呆れるようでも羨望の表情をにじませる。
長老たちによる円卓上の入れ歯の品評会は、みなの放心と不思議な静寂に満たされて、
この話は終わる。
ダヴィンチの壁画、イエスと使徒の13人による『最後の晩餐』の張詰めた空気と対照的な
光景を思い浮かべる。敦煌の仏教美術を存分に堪能し、長旅で食欲は萎える長老8名が
集まる円卓。この「8」という数字に東洋的な意味を探してみたくなる。
何より、触れないとしても両手をかざしたくなるような、燻し銀のような輝きを放ち、閑雅な
香りを漂わせた、そしてこんなに清々しく描かれた入れ歯を私は他に知らない。
高崎で人気のラスク。あのカリッとした食感のお菓子を美味しそうにかじる孫たちを、自分も
あんなふうに食べてみたい、とおばあちゃんは羨ましく眺めていた。でも入れ歯だとどうしても
食べるのがむずかしい・・・。
そんな街の声から生まれたのが、観音屋さんの「観音ソフトラスク」。2度焼きする、という
ラスクの定義はそのままに、用いた素材はカステラ地。
「日本一やわらかいラスク」と胸を張る店主の言葉のとおり、口の中に含むと、舌先だけで
甘くしっとりほどけていくほどのやわらかさが自慢だ。
観音ソフトラスクは街なかの中央銀座通りアーケードにある同店ほか、高崎駅E'siteの物産店
「群馬いろは」でも購入できる。高崎市タワー美術館『平山展』におでかけの際の、旬な一品。
美術館玄関から約160歩、入れ歯の温もりを保てる距離に、その売場はある。
◎観音屋
高崎市中紺屋町22-1 ℡ 027-325-2000
◎高崎市タワー美術館 『平山郁夫展 ~大唐西域画への道~』(2/5~3/31)
http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/art_museum/t/2011_05.htm

