大学の同級生にN君という同じ群馬出身者がいた。私が入学した時に彼が第1学年を
2度落第したところで、卒業も1年後だったから、同級生という言葉が適切か分らない。
SMAPの中居君に似ていたが、いつも鼻毛が出ていた。
N君はキャンパス近くの都電荒川線沿いのアパートに住んでいたので、授業時間が空
いたときなどはそこが格好の溜まり場になっていた。
ある日、予告もせず彼のアパートに上がりこむと、目を輝かせながら2冊のノートを持っ
てきた。そして「ついに新たな学問を確立した」と興奮交じりに言う。
表紙には「カオロジー①・②」とフェルトペンでタイトルがある。中身は海外、多分中央
アジア各国の新聞や雑誌の切り抜きがビッシリ貼り付けられている。彼が言うにはこの
地域の人々の「顔」を民族ごとに類型化しているというのだが、素人には全く分からない。
それまでにもN君は欧州のサマースクールに向けシベリア鉄道で出発し、何をどう間違っ
たかチベットに行ったまま帰って来なかったり、担当講師宅にFAX専用紙ロール1本分の
レポートを送信したり、と普通の人があまりしないような行動が多かったが、そのノート2冊
の内容を延々と説明する彼を見て、ついに来るものが来ちゃったかな、と思った。
卒業後10数年会っていないが、ネットで検索してみたところ、その後大学を転々とし、
2002年はキルギス共和国ビシケクで合気道の道場を探していた模様。帰国後、その分野
では権威があるらしいナントカ賞論文というのをウズベキスタンをテーマに受賞、貿易団体
の業界誌等に頻繁に寄稿しているが、2006年以降の消息はつかめなかった。
ただ、あのノートを作成した頃が、その後の彼の研究活動の出発点だったのは確かだ。
国公立大の前期2次試験が昨日から始まり、受験シーズンもピークを迎えている。この
季節、合格祈願グッズがいろんな所で販売されているが、やはり高崎だるま関連の
商品は多い。
先日、近所のスーパーで見かけ、その日はカレーでもないのに迷わず買ってしまったのが
この写真の福神漬け。パッケージ中央に見事な高崎だるまの写真がプリントされている。
ここ数ヶ月、高崎だるまを見ると反射的にどこの工房のものか見入ってしまう。現在、高崎
周辺には55軒の工房があり、真っ赤なボディに鶴のマユ、亀のヒゲをあしらった共通の
意匠でも、比べてみると表情は様々だ。
特徴ある10数軒のものは識別できるようになった。先日もホームページ作成業者の方の
デザイン案にあっただるまの写真や、㈱アクテブライズさんで新作の「だるまUSB」を見せ
ていただいた時は、どの職人のだるまか当てることができた。多くの人にはどうでもいい
自慢だけど。
それでこの福神漬けのだるま、高崎市鼻高町の国峯さんのものだと確信している。
ポイントは口ひげの力強い「八の字」と全体的に太めで勢いのある線だ。
日頃だるまに接することが多い仕事柄、工房に伺った際やキャンペーン用だるまを購入
した時は、できる限り写真を撮り、職人名を記してデータ保存している。そして時々データ
フォルダを開き、各職人・工房の特徴を比較・分析している。
あの時は可笑しくなったかと心配したN君と、やっていることはあまり変わらない。そして
その時の自分は彼と同じくらい真剣だ。
人は思わぬところで誰かの影響を受けているものである。

