映画好きの有志らとともに、今や全国的に知られるまでに成長した
「高崎映画祭」を立ち上げ、ついには自分たちの手でミニシアター
「シネマテークたかさき」まで作ってしまった茂木正男さんが亡くなって
もう一年になる。
私事になるが、茂木さんとの出会いは大学4年の時。
ロシア映画界の巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督を連れて、うちの実家の
天ぷら屋に来てくれた。お互い映画人どうし、いつの間にか通訳も介さず
ありのままの日本の姿を、身振り手振りを交えながら楽しげに紹介していた。
しばらくは茂木さんとの直接の接点はなかったが、できたばかりのミニシアター
シネマテークたかさきで何か一緒に仕事ができればと目論んでいた。
その希望が叶ったのがちょうど3年前。環境をテーマにした一ヶ月間の
映画上映とコラボイベントを行った。
北極の動物たちを描いた作品の時は字幕監修した東京大学の先生を招いての
レクチャー付き上映、変わり行く中国の都市が背景の作品の時は映画館前に
即席の屋台を設けて小龍包や水餃子を販売、結構儲かった。
シネマテークもこのような試みは始めてで、スタッフとともに試行錯誤の連続
だったが、印象深い一ヶ月となった。
でもその時のイベント会場に茂木さんの姿はなかった。後に命を奪うことに
なる病の治療のため一時入院中の茂木さんからは、まだ頼りなかったろう
スタッフへのエールのブログが毎日更新されていた。今だから告白するが、
私はその日が遅かれ早かれ訪れることを、その頃何となく想像していた。
久しぶりにシネマテークのHPにアクセスしたが、当時のブログ記事は残念
ながら見つからなかった。
何を企んでいるのか分からない、いたずらっ子のような茂木さん、持ちかけて
くる話も突然で唐突だった。
先のイベントに気を良くした茂木さん、アフリカの食糧問題のドキュメンタリー
映画の時にスクリーントークを企画、何故か対談相手に呼ばれた。
ほぼ満員の会場で、事前打合せもなく、(その前に結構飲んでて)汗だらだら
状態の私が何を話したかほとんど覚えていない。
やり残したこともある。
2年前の春、アイルランド映画の時。その時も深夜だった電話での提案は、
上映期間にシアターで二人でアイリッシュパブを開くというもの。
ウィスキーとギネスビールの調達先を調べ、幾つかの商品サンプルを取り
寄せたが、ちょうど自分がこの物産の仕事に就いた直後、また茂木さんは
映画祭の開催時期とも重なり、結局は幻の企画となってしまった。
「××ちゃん、また何か面白いことやろうよ」
その後も会うたびにそんな言葉を掛けてくれた。
そして、またこちらも落ち着いたら・・・と茂木さんの病気のことを忘れかけて
いたときの突然の訃報だった。
「また盛り上がっちゃったね」
お決まりのジャージ姿の茂木さんとそんなふうに語れるイベントを、またいつか
仕掛けてみたい。
シネマテークたかさき隣の一文字屋さんの甘納豆。イベント等でお越しになった
映画監督、俳優さんたちのお土産の定番とのことです。
◎一文字屋
高崎市連雀町51
℡ 027-322-3024
http://machi.goo.ne.jp/027-322-3024

